データ活用はスポーツをつまらなくするのか
今回は分析の話ではなく、ポエムです。
先日、Twitterでボソッと
「データ活用はスポーツをつまらなくする」と「AIは人間の仕事を奪う」は割と似た話だと思ってる
— tsuyupon (@ponsa__ku) 2019年3月30日
こんなことをつぶやいたんですが詳細な話を全然してなかったし、
ちょうど明日(というか今日)
野球×データについて議論する機会があるので、
頭の中を整理しておきたいと思います。
AIは人間の仕事を奪うのかに対する私見
数年前からいろんなところで議論されていた話題かと思います。
私としてはAIは人間の仕事を奪うという言い方は適切ではないと思っていて、
AIは人間の仕事の価値を変化させるの方がしっくりきています。
◆「AIが仕事を奪う」への疑問 いま、“本当に怖がるべきこと”は:
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/13/news018.html
この記事で 松本さん(@matsuken0716)がおっしゃっていることを
読んでいただければわかると思いますが、
"""仕事(職業)"""自体がなくなるというよりは、
一部の職業の一部のタスクが自動化されるということであり、
それによって雇用者が被雇用者に求める価値が変わってくるのだと思います。
仕事の早さや量ではなく、"""質"""で勝負していく世界が増えてくるでしょう。
また、職業を奪うという点では、AIの導入よりも機械などハードの発展の影響の方が大きいと思います。
そういう意味ではその両方を兼ね備えている IoT は姿を変えてもう一度流行るかもしれません。
本題:データ活用はスポーツをつまらなくするのか
では、なぜ「データ活用はスポーツをつまらなくする」と
「AIは人間の仕事を奪う」は似た話だと思ったのかについて触れていきたいと思います。
はじめに
まず、この2つの文の対応関係を整理すると
前者 | 後者 |
---|---|
データ | AI |
スポーツ | 仕事 |
つまらなくなる | 奪われる |
こうなりますよね。
前者の文を一般化して誇張すると後者になるイメージです。
ただ、スポーツとひとくちに言っても
- 競技
- 娯楽
- ビジネス
さらには
- 体力向上
- 教育
賭博
と様々な側面を持っています。
そして、Twitterでも昨今話題の「球数制限」「捨て試合」など
議論が起こっていることの大半は、
その方が上記のどこを重視しているかをまず理解すれば
「そういう考え方もあるよね。」
「気持ちはわかる。だけど、他人を否定しちゃダメだよ。」
などと一歩引いて議論ができると思います。
相手の立場を理解する、これ大事。
では、それぞれの立場における「つまらなくなる」というのは
どんな状況を指すのかを考えてみたいと思います。
競技
まずこれが一番基本的で主体的な立場です。
競技の主体者、つまりプレイヤー。
データ活用によりプレイヤーがつまらなくなるのは(第三者として考えると)どんな状況か。
- 選手の気持ち、感覚、経験よりデータが優先される
↓戦術としての結果
- シフトが敷かれる
- 交代のタイミングが定量的にしきい値で決められる
↓気持ちの変化
- 自分の考えでプレーができない
- 監督、コーチと考えが合わない
↓悪循環になると
- 勝てない
- 活躍できない
- 試合に出られない
本来、データ活用はいわゆる「勘、経験、度胸」を後押しする存在であるはずなのに、
これらと相反するものであると捉えられがちです。
AIという語が誤解されている煽りを受けている気がします。
プレイヤーに対するデータ活用でいうと戦術面より
個人の問題点(スイング軌道や苦手コースへの対応など)の改善に焦点が向くべきでしょう。
(そのためには物理学が〜とか、人間の骨格が〜とかの議論はまた別の話)
娯楽
これは(ファンというより一般的な)観客の立場です。
シンプルに試合を見て楽しめたかが重要だと思います。
では、データ活用によりファンがつまらなくなるのはどんな状況か。
- 配球、守備シフトによりヒットが出にくくなる(≒変化がない)
- 期待得点が増える戦術をとり続ける(≒先が読めてしまう)
(正しいんですけど)勝利にこだわった戦術をとることで、
試合を見ていてドキドキがないと感じてしまう。
正直なところ、こればっかりは私は杞憂だと思っています。
これは競技のところに書いた個人の問題点の改善に通づると思いますし、
結局は選手個人の(役割・個性を尊重した)質の向上を目指すことになると思います。
ビジネス
最後にビジネスについて。
これは経営の立場です。
強い選手を集める、育てる、そして、事業を継続させていくためには、お金が必要です。
では、データ活用により経営がつまらなくなるのはどんな状況か。
- 「娯楽」で挙げた問題の影響で観客が集まらない
↓
- 利益が得られない
そら(球場に来てくれなかったら)
そう(元も子もない)
よ
そして、その利益を最大化するために「支払ったお金に見合った体験を提供し続ける」ことが必要。
つまり、プレーで観客を魅了しつつ、ファン・家族が楽しめるコンテンツを提供しつつ、勝利し続けることが必要です。
うーん、、、
ファン・家族が楽しめるコンテンツはまた違った議論ですし、繰り返しになりますが、
やはり選手個人の(役割・個性を尊重した)質の向上を目指すことになると思います。
まとめ
「データ活用はスポーツをつまらなくする」と「AIは人間の仕事を奪う」が
似た話だと思った背景について野球を例に私見をまとめました。
- 競技
- 娯楽
- ビジネス
これらはそれぞれ独立しているわけではなく、
部分的に重なり合ってるものであり、
どれが欠けても成り立たないものだと思います。
データ活用はスポーツをつまらなくするものでもなければ、
これらの存在を脅かすものでもありません。
データ活用はスポーツの楽しさを100%から120%にも200%にもする可能性はあるが、
0%にしてしまう可能性はないと考えています。
「正しい情報を正しく読み取れるか」がカギになってきますね。
最後に
異論は全然あると思いますし、そもそもこの議論をすること自体が
イチローさんのおっしゃっていた「考える野球」につながってくるのだと思います。
Twitterでもリアルでもぜひみなさんの意見をお聞かせください。